社長・坂本毅の『バンベン日記』


 

2019,04,20, Saturday 07:05 PM


【原点回帰・オルドスの風】
~塩を売って緑を買う男の始まりの物語~

第4回:町の様子

その後、新学期が始まるまでの1週間はオルドス式宴会もなく、自転車で小さな東勝の町をぐるぐる回ったり、日本語の授業の教案作りなどをして過ごした。
東勝は自転車で15分走れば端から端へたどり着いてしまうほどの小さな町。カシミヤと石炭が有名だそうだ。北のはずれにモンゴル族中学があり、南のはずれにカシミヤ工場がある。

当時は信号機が1か所。しかも壊れていた。車が非常に少なく、車道には自転車とロバ車が幅を利かせていた。モンゴル族中学から自転車で10分行ったところにメインストリートがありデパートが2件、郵便局、銀行、レストラン、映画館などが立ち並ぶ。とりあえず生活用品などを買おうとデパートに入ってみた。

デパートといってもだいぶ小規模で中は薄暗い。モノは豊富だがよく見ると種類が少ない。まずはマグカップ売り場へ商品はすべてショウケースの中に入っているのでいちいち服務員に言って出してもらわなければならない。

「色はいいが形が・・・」いろいろ迷って、何回も取り替えてもらっていると服務員も不機嫌になる。「何でもいいから早くしなさいよ。買うの?買わないの?」ついにオバサン服務員を怒らせてしまった。どれもイマイチ。最後はとにかくコーヒーが飲めたらいいや、と開き直り「じゃ、これください。」と妥協の産物を手に取り言った。服務員は紙に商品名と金額を記入し、それをボクに渡し、「あそこで払って。」めんどくさそうに言った。

「あそこって?」とても聞ける雰囲気ではない。しばらくウロウロしてやっとレジを見つけた。そこで金を払おうとすると、そこの服務員はボクの渡したお札を珍しそうに見るばかりで受け取らない。

当時中国では「兌換券」というものがあり、外国人はそれを使うようになっていたのだが、ここ東勝では通用しないようだ。そのときボクは「兌換券」しか持ち合わせがなく、仕方なく、一度銀行に行き「兌換券」を普通のお金「人民元」に換えてもらい、さっきのレジで金を払い、領収書にスタンプを押してもらい、マグカップ売り場へ。「レジに行くのに何時間かかってるのよ。」とオバサン服務員にブツブツ言われながら、やっとの思いでマグカップ1つを手に入れた。

その後、洗剤やタオルなどの生活用品と授業用の大きな模造紙、画用紙、マジック、磁石などを買い込んだ。まとめて買いたくても別の売り場にある場合はその都度、売り場(品定め)→レジ→売り場という過程を経ないと商品が手に入らない。品定めのとき気に入らなければ服務員にお願いしてまた、別のものを出してもらう。

自分の気に入ったものを買うためには服務員のめんどくさそうな表情に負けない強い意志を持ち、そして笑顔で何度も服務員にお願いしなければならない。それ以前に客が多いとき、また、暇すぎて服務員同士がおしゃべりに夢中になっているとき、売り場で読書をしたり弁当を食べたりしているとき、何だか知らないが機嫌が悪そうなときなどはこちらを振り向かせるのもひと苦労だ。壁には「為人民服務」という看板が空しく掲げられてある。

日本のスーパーやコンビニでは一言もしゃべらず買い物ができてしまうのだが、ここでは拙い中国語を必死に駆使して、また服務員に愛想笑いを浮かべて、やっと買い物ができる。「中国での生活は戦いだ。」と誰かが言っていた。これが一時的な滞在なら「これも人生経験」或いは「これも中国語の勉強」という気持ちで望めばいいが、「2年間も続く」と思うと気が重くなる。

「戦い」を終えて学校への帰り道、夕暮れ時でちょうどきれいな夕日が見えたので、そっちの方向に自転車を進めた。西側の町はずれの公園まで行って自転車を止めた。公園と言ってもただのだだっ広い原っぱという感じ。結構人がいる。そして侵食溝が痛々しい丘の向こうに夕日が沈むのがよく見えた。散歩をしている人、バドミントン、卓球に興じている人、辺りを走り回る子供たちなどがシルエットとなって美しい風景を醸し出していた。

一瞬ここが平和で豊かな町に思えた。日本から遠く離れたこんな僻地にもちゃんと人々の生活の営みがある。そう思うと心が和んだ。これからボクもこの営みの中に入っていくんだな・・・。

俄然やる気が出てきた。

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