社長・坂本毅の『バンベン日記』


 

2019,04,17, Wednesday 04:28 PM

【原点回帰・オルドスの風】
~「塩を売って緑を買う男」の始まりの物語~

第2回:オルドス式宴会
ジープでの6時間の旅を終え、ボクの受入先である「オルドスモンゴル族中学」に着いた、もう日は暮れかかっていた。とりあえず学校の近くの「招待所」と呼ばれる安宿にチェックイン。

部屋の中でしばらく途方にくれていた。「大草原は何処へ。」そうしているとモンゴル族中学の校長先生がやって来た。どっしりとした風貌、浅黒い顔、まさにボクが想像していた典型的なモンゴル族だ。簡単に挨拶するとすぐに招待所の食堂に連れて行かれた。

そこには学校の指導者や地方政府の関係者など10人ほどが集まっていた。「お茶を飲みなさい。これはモンゴル族が好むスーテイチェイ(ミルクティー)だ。」隣に座った校長に勧められるまま、お碗に入ったお茶を飲んでみた。「ん?しょっぱい。これがミルクティーか?」意表を突かれたが素朴な味だ。

服務員が円卓の上に数種類のモンゴルの乳製品と「鳥の餌」のようなものを置いた。またも勧められるままに黄色い乾燥した乳製品を手に取った。「チーズ」だそうだ。そのまま口に入れるとそれは歯が折れそうなくらい硬い。そして酸っぱい。思わず顔をしかめるとみんなの笑い声。

「こうやって食べるといい」校長がミルクティーの入ったお碗に「鳥の餌」を放り込んだ。これは「チャオミー」という粟に似たものを炒ったものだ。これも硬そう、まさに鳥の餌。続けてさっき食べた「チーズ」やそのほかの乳製品を無造作にお碗に放り込み、それをボクに渡した。「これで食べやすくなる。」そう言っていたが、塩味のミルクティーに得体の知れないものを放り込まれても食べる気がしない。でもみんなが見ているので食べないわけにいかない。

一口食べての印象は・・・。原始人の食べ物。何の根拠もなくそう思った。確かに「チーズ」も「チャオミー」もふやけて食べやすくなっていた。

しばしの雑談。ボクに対しては中国語で話してくれるが、なかなか聞き取れない。北京から同行していただいた李さんに通訳してもらい何とかコミュニケーションできた。しかし、学校関係者同士で話す言葉は「モンゴル語」。これは李さんもボクもさっぱりわからない。

やがて校長の合図とともにモンゴル衣装を着た若い女性が3人登場。「オルドス式宴会」が始まった。彼女らはボクの前にやってきていきなり歌を歌いだした。
両手にはモンゴル族の神聖な白絹「ハダ」を掲げている。こぶしを効かせ高音を張り上げ歌う様はまるで民謡歌手のようだった。手拍子を取りながら聴いているとそのうちの一人が歌いながら、お酒が入った銀製のお碗をボクのほうに差し出してきた。

独特の匂いがする。中身は白酒(バイチュウ)と呼ばれる60度くらいある酒であることは容易に想像できた。その名も「オルドスバイチュウ」。銀碗を受け取り一口飲んでみた。舌から喉にかけて焼けそうに痛い。そしてアルコールの強烈な臭い。「これはもう飲めない。」銀碗を返そうとすると、女性はそれを拒んで歌を続ける。

全部飲み干さないと歌は終わらないのだ。これは大変、何回かに分けごくごくと何とか飲み干してやっと歌を終わらせることができた。宴席に笑いと拍手が起こった。異文化交流も楽じゃない。まだほとんど何も食べてない状態だったので、のどから胃にかけて焼けそうなほど痛い。急いでお茶を飲み、料理をつまんだ。

その後はモンゴル族中学の校長が挨拶そして乾杯。こんどはお猪口。最初が強烈だったのでそれほどではないが、3回も乾杯があった。少し間をおいて校長の隣の人が杯を挙げ始めた。

こうしてバイチュウの乾杯が続いた後でメインディッシュ「ショウパーヤンロウ」(手づかみで食べる塩茹での骨付き羊肉)が出てきた。校長先生が「これを食べなさい。」とこぶしほどもある肉の塊をとってくれた。湯気のたちこめる熱々の肉塊をひとかじり。乳臭いような独特の獣臭が口いっぱいに広がる。これもあまり食べられそうにない。少しだけ食べて、それからその脇にあるジャガイモばかり食べていた。

もうそろそろ終わるのかと思っていたら、今度はまたモンゴルの女性が登場。今度は牛の角を掲げてボクの前で歌い始めた。その角の中身はもちろんバイチュウ。それが終わると、「じゃ、日本の友だちにも歌を歌ってもらおう。」と、ボクも歌わせられる羽目に。終わるとみんな杯を挙げた。ボクの下手な歌を聴いて安心したのか「今後は私が・・・。」と次々に歌いだす。そして乾杯。

こうして酒と羊と歌のオルドス式宴会はボクの意識がなくなるまで続き、気がついたらホテルのベッドでうつぶせに倒れていた。記念すべきオルドスでの第1日目は失望と泥酔の中で終わった。(つづく)

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