社長・坂本毅の『バンベン日記』


 

 
2019,05,16, Thursday 05:03 PM


授業は相変わらず快調に続けていったが、毎回同じ流れで進んでいた。新出単語の紹介、文型練習、応用練習、本文音読、最後にその日の学習項目のまとめ。少々ワンパターン気味。
45分間に少し変化を持たせたいと思い、日本の歌を紹介することにした。日本の歌は演歌からJポップ、童謡までいろいろな種類のテープを日本から持ってきていたが、最初にどの歌を紹介するか、悩むところである。

本当は日本の高校生が好むようなJポップやアイドル系の歌を紹介したかった。日本で流行っているからといってこちらの生徒が好むとは限らないが、同じ世代の日本人が好む曲を知ることが異文化理解につながるのでは、と思ったからだ。

しかし、彼らはもともと日本に興味を持って日本語を学習しているわけではない。日本の歌を紹介して「なんだこれは?」と思わせてしまったら、結果的に彼らの日本語学習意欲も削いで逆効果になってしまう。ここは慎重にならざるを得ない。まず、ボクの部屋によく来る何人かの生徒たちに日本の歌を聞かせて反応を見た。一番反応のいい歌を最初に教えよう。

アイドル系の歌にはみんな興味を示さない。Jポップ系は個人差が激しい。全員に好評だったのが、なんと「北国の春」。日本の高校生がこの歌を聞いているとは思えないので、少々不本意ではあるが、これで行くしかない。さっそくガリ版に歌詞を書き込んだ。ここの生徒は知らなかったが、この歌は中国でもよく歌われていて、中国語の歌詞もあるので横にそれを書き加えた。

まず、53組の授業。大きいカセットテープレコーダーを持って教室に入ってので、生徒たちは何が始まるのか興味津々といった様子。授業はとても気合が入っていた。そのまま授業の終盤まで引っぱって、終了5分前、おもむろに歌詞を配った。初日はとりあえず聞かせるだけで終わる予定だった。

予想を上回るインパクトがあった。授業が終わって、何人かの生徒が教壇に押し寄せた。その場でボクの下手な「北国の春」を聞かせる羽目になった。

51組でも好評で、夜の自習が始まるまでの時間、生徒が続々とボクの部屋にやってきて一緒に歌った。オルドスの生徒はもともと歌が大好き、ほとんどの生徒が親元を離れこの学校で寮生活をしている。「北国の春」は故郷に対する思いが人一倍強い生徒たちの心を確実に掴んでいった。その後この歌を1ヶ月にわたって授業の合間に聞かせ続けた。1番だけはみんな歌えるようになっていた。日本語学習の動機付けにもなったみたいで、非常に効果的だった。

この学期に計3曲、日本の歌を教えた。「北国の春」の次に教えた歌は「四季の歌」。これも中国では有名な歌で、中国語以外にモンゴル語の歌もある。この歌は元々生徒もモンゴル語で歌えるので、すぐに日本語でも歌えるようになった。その次に教えたのは「昴」。次の学期には「星影のワルツ」「与作」・・・、と果てしなく演歌の世界に入っていく。ポップスやアイドル系の歌はダメだとボクが勝手に判断してしまっていた。

そして、それまではごく一部の生徒だけがボクの部屋にやってきていたが、歌をきっかけに部屋を訪れる生徒が増えていった。一緒に歌を歌ったり、日本語の練習をしたり、日本のこと世界のことについて筆談を交えていろいろ話をすることもできた。

日本の歌は授業のほかボクの生活にも彩を添えていった。



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